2050年に向けたカーボンニュートラルへの挑戦の中で、アンモニアは非常に重要な役割を担っています。この記事では、燃料アンモニアがどのように脱炭素社会の実現に貢献しているのか、その役割と政府の施策を紹介します。
目次
- 脱炭素におけるアンモニアの役割とは?
- 脱炭素におけるアンモニアの政府の施策は?
- まとめ
脱炭素におけるアンモニアの役割とは?
世界的な脱炭素化社会に向けた動きの中でアンモニアは新たなエネルギー源として注目されています。アンモニアは炭素を含まず、燃焼時にCO2を排出しないため、クリーンエネルギーとしての潜在力が高いとされています。特に、火力発電や海運業界での混焼燃料として、あるいは水素エネルギーの運搬媒体としての利用が期待されています。
三つのアンモニア
アンモニアは、ハーバーボッシュ法という製造方法によって非常に効率よく製造できるようになりました。しかし、CO2排出量が多いという問題点を抱えています。
水素と似たように、アンモニアには製造方法ごとに3つの種類があるため、それについて説明をします。
グレーアンモニア
このグレーアンモニアは、ハーバーボッシュ法によって製造されたアンモニアです。高圧と高温下で、水素と窒素を化学的に反応させてアンモニアを生成します。水素は主に天然ガスから得られます。水素は天然ガス(メタン)の改質によって生成され、これと大気中の窒素を合成することでアンモニアが製造されます。よって、CO2が副産物として多量に排出されるため、環境への影響が大きいアンモニアです。
ブルーアンモニア
ブルーアンモニアの製造も基本的にはハーバーボッシュ法に基づいていますが、CO2排出を削減するために、CO2回収・貯蔵技術(CCS)が導入されます。ハーバーボッシュ法で生成されたCO2を回収し、地下に貯蔵することで、大気への排出を抑制します。CCSによりCO2排出が削減されるため、グレーアンモニアよりも環境負荷が低いのが特徴です。
グリーンアンモニア
グリーンアンモニアの製造には、再生可能エネルギーを利用して水から電気分解によって得られた水素を使用します。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電し、その電力を使って水を電気分解して水素を生成します。そしてこの水素を大気中の窒素と反応させてアンモニアを製造します。再生可能エネルギーを使用するため、CO2排出がほとんどなく、三つのアンモニアの中で最も環境に優しい製造方法です。
脱炭素におけるアンモニアの政府の施策は?
日本政府は、アンモニアを脱炭素社会のキープレイヤーと位置付け、その普及と技術開発に向けた施策を推進しています。これには、アンモニアの生産、輸送、利用技術の革新、関連インフラの整備、国際協力の強化などが含まれます。政府はアンモニアを使った発電の商業化や、輸送分野での利用を目指し、研究開発や実証試験に投資を行っています。
全体の方向性
日本政府は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、燃料アンモニアを重要なエネルギー源として位置づけています。2020年のカーボンニュートラル宣言に基づき、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、燃料アンモニアが14の重要分野の一つとして挙げられています。この戦略では、2030年までに石炭火力へのアンモニア混焼を20%導入・普及させることを目標とし、年間300万トンの国内需要を見込んでいます。2050年には年間3,000万トンの需要を見込み、効率的で大規模な製造を目指しています。
戦略の詳細
発電
「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の電源構成にアンモニアが含まれ、火力発電におけるアンモニアの混焼が注目されています。アンモニアは燃料として火力発電に利用可能で、既存のインフラを活用しつつCO2排出を抑制できる利点があります。特に石炭火力への混焼が容易であるため、最初の導入対象としています。
技術
政府は、アンモニア供給のコスト低減や高混焼・専焼技術の開発に注力しています。2022年1月には、「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトの公募を行い、アンモニア製造の効率化から利用拡大までの技術的課題を解決しようとしています。
サプライチェーンの構築
また、国際連携を通じてアンモニアの国際的な認知度の向上やサプライチェーン構築を進める取り組みが行われています。2030年以降に向けた大規模なアンモニア利活用のためには、需要創出と供給側の大規模商用投資の促進が重要であり、2022年3月に設置されたアンモニア等脱炭素燃料小委員会では、このような課題解決に向けた議論が進められています。
出典:資源エネルギー庁ホームページ, 水素政策小委員会/アンモニア等脱炭素燃料 政策小委員会 合同会議 中間整理
まとめ
いかがでしたか?
アンモニアの動向がお分かりいただけたかと思います。
今後、日本政府はさらに制度の具体化を進め、技術開発、国際競争力あるサプライチェーンの構築に向けた支援が行われる予定です。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、大手企業を中心にCO2ゼロに向けた目標が設定され、それらの企業と取引をする会社にも影響が波及しています。
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