脱炭素社会実現に向け、水素エネルギーは今、世界の注目を集めています。日本政府は、2050年のカーボンニュートラル目標達成のため、水素を中心としたエネルギー戦略を推進しています。この記事では、水素の役割、政府の施策を通じて、脱炭素における水素について深堀っていきます。
目次
- 脱炭素における水素の役割とは?
- 脱炭素における水素の政府の施策は?
- まとめ
脱炭素における水素の役割とは?
脱炭素社会の実現に向けて、水素は非常に重要な役割を担っています。水素は燃焼時にCO2を排出しないという特徴があるため、普及に大きな期待がされています。
水素は電力の蓄積や輸送、産業用熱源、車両の燃料など幅広い分野での活用が期待されており、世界の脱炭素化への重要な鍵となります。
3つの水素
水素には主に3つの種類があり、それぞれの生産方法によって区別されます。これらは「グレー水素」、「ブルー水素」、「グリーン水素」と呼ばれています。
グレー水素
グレー水素は、天然ガス(主にメタン)の改質によって生産されます。
すぐにお分かりいただけると思いますが、大量の二酸化炭素(CO2)が副産物として排出されます。現在、最も一般的に生産されている水素の形態ですが、環境に対する影響が大きいため、脱炭素化の観点からは望ましくありません。
ブルー水素
ブルー水素も基本的には天然ガスから生産されますが、生成時に発生するCO2を回収し、貯留または利用します(CCS/CCUS技術)。
これにより、大気中へのCO2排出を大幅に減少させることが可能です。ブルー水素は、グレー水素よりも環境への影響が小さいとされていますが、CCS/CCUS技術の導入には追加のコストと技術的な課題があります。
グリーン水素
グリーン水素は、再生可能エネルギー(例えば太陽光や風力)を用いた電気分解によって水から生産されます。
この方法ではCO2が全く排出されないため、最も環境に優しい水素の生産方法とされています。脱炭素社会を目指す上で、グリーン水素の重要性が高まっていますが、現在のところコストや生産効率の面で課題があります。
脱炭素における水素の政府の施策は?
多くの国で、脱炭素社会への移行を加速するために、水素戦略を策定しています。これには、水素の生産、輸送、利用技術の開発、インフラ整備の支援、規制緩和などが含まれます。また、水素エネルギーの普及を促進するための補助金や税制上の優遇措置も実施されています。
ここでは日本の施策を紹介します。
水素戦略の方向性
日本の「水素基本戦略」とは、2017年に政府が発表した計画で、2050年までに水素を主要なエネルギー源とする社会の構築を目指しています。
水素を広めるためには、まず「作る」、「運ぶ」、「使う」というサプライチェーンの整備が必要と考えており、水素は水の電気分解やバイオガス、廃プラスチックから生成され、配管や液化によって運ばれます。日本政府はこの供給と輸送の技術に投資を行っています。
水素の「使い方」においても重視しています。例えば、日本が先駆けて開発した燃料電池自動車のような、生活の中での水素の使用法を普及させようとしています。政府は、2030年までに水素の価格を現在の100円から30円に、2050年には20円に引き下げる目標を掲げています。
2023年6月6日に改定された水素基本戦略では、2040年までに年間1200万トンの水素を導入するという具体的な目標が設定されました。さらに、メタンやアンモニアなどの合成燃料も脱炭素社会に不可欠とされ、水素と同様に研究が進められています。改定により、家庭での利用だけでなく、工場や機械、陸海空の輸送手段など産業分野での水素使用も拡大する方針が示されています。
水素エネルギーの普及と市場の創出を加速するための包括的な戦略を展開しています。この戦略は、水素の供給と需要の両面からのアプローチを中心に据えています。
【供給面の施策】
- 大規模な水素サプライチェーンの構築を目指し、既存燃料との価格差を考慮した支援。
- 効率的な供給インフラの整備を支援し、国際競争力のある産業拠点の整備。
- 低炭素水素への移行を目指した規制の検討。
- 法令の適用関係の整理と明確化、安定したサプライチェーン確保のための上流権益への関与。
【需要面の施策】
- 省エネ法の活用による需要創出、非化石転換の進展。
- トップランナー制度を通じた機器メーカーへの水素対応の要求。
- 燃料電池ビジネスの産業化とコスト削減、普及拡大。
- 港湾などでの集中的な水素需要創出と地域での水素製造・利活用の推進。
【世界市場への展開】
- 拡大する欧米市場での初期需要の獲得とアジア市場における先行投資。
- 大胆な民間設備投資の促進、大規模サプライチェーン構築支援の有効活用。
- 海外政府や企業との戦略的連携、国際的なプロジェクトへの参加。
- アジア・ゼロエミッション共同体構想などを活用したアジア市場での協力。
- 知的財産や標準化に関する国際的な取り組み、人材育成と革新技術の開発。
これらの施策は、水素がカーボンニュートラル社会の重要な要素として機能するための基礎を築き、日本の水素エネルギー関連産業の発展とグローバル市場での競争力強化を目指しています。
出典:環境省ホームページ, 水素基本戦略
まとめ
いかがでしたか?
政府は、水素の供給コストの低減や安定供給の確保、消費の促進を通じて、国内外での水素市場の成長を支えることを目指しています。また、国際的な協力や知的財産の保護、技術開発にも注力し、水素エネルギーを脱炭素社会実現のための主要なエネルギー源として位置づけており、さらなる政府の支援、官民の連携の加速が期待されています。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、大手企業を中心にCO2ゼロに向けた目標が設定され、それらの企業と取引をする会社にも影響が波及しています。
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