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【GHG排出量】第三者検証の進め方をISOに沿って解説!

目次

1.はじめに
2.国際基準
3.第三者検証の進め方
 1) 次に関する合意
  ・保証水準とは?
 2) 妥当性確認又は検証アプローチの開発策定
 3) GHG情報システム統制の評価・GHGのデータ及び情報の評価
 4) 基準に照らした評価
 5) GHGに関する主張の評価
 6) 妥当性確認又は検証の声明書 の発行
4.まとめ

1.はじめに

前回の記事では、GHG排出量の第三者検証の必要性について解説しました。CDP等のイニシアティブも第三者検証を推奨しています。情報の透明性、信頼性を担保するためにも、第三者検証は環境情報の開示における非常に大切なプロセスと言えます。

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)  

関連記事:「【GHG排出量】第三者検証は必要?CDPスコアアップの視点も含めて解説!

今回の記事では、第三者検証の進め方を解説します!

2.国際基準

第三者検証は、どのような基準をもとに行なわれるのでしょうか?検証を行う目的や範囲により異なりますが、ここでは一般的な例として、ISOをご紹介します。
国際的に統一されたGHG算定のルール、検証のルール、検証機関に対する要求事項に関する枠組みとして、ISO14064、ISO14065があります。

・ISO14064-1:組織(企業や工場等)におけるGHG算定のルールを定めたもの。
・ISO14064-2:プロジェクトによる排出削減・吸収量算定のルールを定めたもの。
・ISO14064-3:GHG算定の妥当性確認・検証に関するルールを定めたもの。
・ISO14065 :検証機関に対する要求事項を定めたもの。
(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)  

この内、「ISO14064-3」と「ISO14065」が、検証に関わる枠組みです。
尚、CDPは検証基準を複数認定していますが、そのひとつがISO14064-3です。
環境省が実施しているSHIFT事業では、ISO14065の認定又はISO14065の認定申請受理が検証機関の要件とされています。
(参考:CDP Verification 2023年8月4日閲覧)
(参考:環境省 SHIFT事業特設ページ 検証機関 2023年8月4日閲覧)

3.第三者検証の進め方

検証ではリスク(排出規模、複雑さ等)評価に基づき、組織境界、算定対象活動の確認、モニタリング・算定方法の妥当性、運用体制の有無、データ取得漏れ、記入ミス、データ改ざん等の確認、複雑な排出プロセスがある場合には専門的な知識など、多岐に渡るチェックを行います。
データチェックだけでなく、現地確認や責任者・現場職員へのインタビューも行います。

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧) 

ISO14064-3の中で妥当性確認及び検証のプロセスが解説されています。以下はISO14064-3に沿って解説します。

1)次に関する合意 

検証にあたって、まず最初に行うのが合意形成です。検証機関と事業者の間で以下について合意形成をします。

−保証水準 
−目標 (目的。何のために検証を行うのか)
−基準 (どのルールに則っていることを検証するのか)
−範囲 (どの範囲の算定を検証の対象にするか)
−重要性 

(例)
範囲
・組織境界:各種資料及びインタビュー等により確認
・活動境界:各種資料及びインタビュー等により確認
・Scope1,2,3

  • 保証水準とは?

保証水準には、一般的に「合理的保証」と「限定的保証」の2種類があります。

環境省がさらにわかりやすく解説しているのでご紹介します。

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)

なぜ保証水準を定める必要があるのでしょうか?

検証機関が検証の際に判断を下す際、統制に内在する限界、定性的性質をもつ証拠などの要因のため、絶対的保証を達成することは不可能です。そのため、検証プロセス開始のまず最初の段階で、事業者(検証を受ける企業)のニーズを考慮して、依頼者が求める保証水準を確定するのです。

一般的に、高い水準の保証である「合理的保証」の方が、時間と労力、コストを要します。

例えば、環境省が実施するSHIFT事業では、検証を「合理的保証業務」であると定めており、「検証報告書の結論は、合理的保証であることがわかるように表明しなければならない。」としています。
(出典:環境省「排出量検証のためのガイドライン」2023年8月4日閲覧)

一方、サステナブル報告書等で公開するために自社の手法に基づき算定した排出量を検証する場合は、「限定的保証」を採用しているケースも多いです。
算定の目的と、情報公開の目的を加味して、検証機関と共にどちらの保証水準とするか定めたいところです。

2)妥当性確認又は検証アプローチの開発策定

−妥当性確認又は検証の計画 
−サンプリング計画

(例)
検証テストとして
・伝票突合せ:燃料の請求書など書類の根拠データを辿り、整合性を確認
・算定結果の確認:転記や計算方法の確かさの確認
・データの見直し:報告情報の脱漏がないか確認
・裏づけ:計量器の校正などについて第三者から書面の裏づけを取得

データのクロスチェックとして
過去の実績データなど他のデータを利用して、算定結果の妥当性を確認。

3)GHG情報システム統制の評価・GHGのデータ及び情報の評価 

計算の正確性のみならず、データが適切に管理され収集されているかどうかも確認を行う。

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)

4)基準に照らした評価

(例)
該当する規格若しくはGHGプログラムが承認したGHGの推計、定量化、モニタリング及び報告のアプローチ及び方法論を今後使用する予定であるか、又は既に使用しているか。

5)GHGに関する主張の評価

(例)
事業者の主張が、実際のパフォーマンスを反映し、完全性、一貫性、正確性及び透明性を備えた情報によって裏付けられていることを確認する。

6)妥当性確認又は検証の声明書 の発行

(報告書の例)

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)

4.まとめ

いかがでしたか。今回の記事では、第三者検証の進め方を紹介しました。

排出量算定の目的、算定結果公開の目的によって、検証の内容は変わってきます。また、検証内容が変われば、検証コストも変わってきます。排出量算定の際にも「目的」を定める事が重要なポイントでしたが、検証の際も同じく「目的」を明確にすることがポイントです。

まずは目的を明確にする。そこからスタートしてみてはいかがでしょうか。

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