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二国間クレジット制度(JCM)とは?事例も紹介!

更新日:2024.01.11

地球温暖化の影響が拡大するにつれて、温室効果ガスの削減が喫緊の課題となっています。

日本の2021年度の温室効果ガスの排出・吸収量は11億2,200万トンで、G7中で2番目に多いという結果でした(※1)。また、世界全体の排出量を削減するためには、先進国だけではなく途上国の排出量削減も重要です。
地球温暖化対策には、国内対策に加えて海外での取り組みが必要なのです。

このような状況の中、日本は温室効果ガスの世界的な排出削減・吸収に貢献するため、二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)を実施しています。

二国間クレジット制度とはどのような制度なのでしょうか。この記事では、その概要、実施状況と今後について解説します。

目次

  1. 二国間クレジット制度(JCM)とは
  2. 実施状況
    1. モンゴル:太陽光発電(ファームドゥ株式会社)
    2. インドネシア:高効率システム(兼松株式会社)
    3. ベトナム:アモルファス高効率変圧器(裕幸計装株式会社)
  3. 今後
  4. まとめ

1.二国間クレジット制度(JCM)とは

温室効果ガスの世界的な排出削減・吸収に貢献するため、途上国等の状況に柔軟かつ迅速に対応した技術移転や対策実施の仕組みを構築すべく、日本が実施しているのが二国間クレジット制度(以下、JCM)です。

JCMのポイントは以下3点です。
・優れた脱炭素技術等、製品、システム、サービス、インフラの普及や緩和活動の実施を加速し、途上国の持続可能な開発に貢献。
・パートナー国で実施される緩和行動を通じて、日本からの温室効果ガス排出削減又は吸収への貢献を定量的に適切に評価し、それらの排出削減又は吸収によって日本及びパートナー国の排出削減目標の達成に貢献。
・パリ協定第6条に基づいて実施し、地球規模での温室効果ガス排出削減・吸収行動を促進することにより、国連気候変動枠組条約の究極的な目的の達成に貢献。

JCMは、日本の持つすぐれた低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラを途上国に提供することで、途上国の温室効果ガスの削減など持続可能な開発に貢献し、その成果を二国間で分けあう制度です(※2)。

【図1:JCM(二国間クレジット制度)】

出所:環境省 JCM(二国間クレジット制度)について(2023年11月9日閲覧)

途上国にとって、先進的な低炭素技術の多くはコストが高く、投資回収の見込みが立てにくいという状況があります。しかし、先進国からの資金・技術提供を得て排出削減に取り組み、成果をクレジットとして先進国に渡すことにより、途上国は自国だけでは実施が難しかったプロジェクトに取り組むことができ、先進国はクレジットで自国の削減目標をおぎなうことが可能になります。

【図2:JCMのメリット例】

出所:環境省 JCMの最新動向 令和5年7月時点 日本語版 p3(2023年11月9日閲覧)

日本は2021年に日本のNDC(国が決定する貢献)として、2030年度までの累積1億t-CO2程度の排出削減・吸収量を目指しています。しかし、国内だけでの達成は難しいこともあり、JCMを適切に活用する方針を取っています。

2.実施状況

日本はこれまでに28か国との間でJCMを開始するための二国間文書に署名しており(2023年10月時点)、他国についても協議を行っています。また、すでに2013年より事業が採択されており、クレジット発行も実施されています。

<署名国>(2023年10月時点)※3
モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ、フィリピン、セネガル、チュニジア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、スリランカ、ウズベキスタン、パプアニューギニア、アラブ首長国連邦、キルギス、カザフスタン

ここではその中からいくつか実施例をご紹介します。

1.モンゴル:太陽光発電(ファームドゥ株式会社)

採択年度:2016年

ウランバートル市近郊農場での太陽光発電による電力供給プロジェクト。

ウランバートル市近郊の農場において、農業と太陽光発電事業を組み合わせたソーラーファームのプロジェクトを進めています。太陽光発電所を建設し、排出量の削減や大気汚染の軽減に貢献します。
また、将来的に太陽光パネルが設置されているエリアで品質の高い野菜を栽培し、都心部へ供給することが計画されており、日本式最先端農業の実証実験も進められています。
8.3MWの太陽光発電施設で9,585 tCO2/年の温室効果ガス削減量が想定されており、クレジット発行中です。

<参考>2023年11月10日閲覧
・炭素市場エクスプレスウェブサイト 2017年8月8日記事
・JCMウェブサイト 事例紹介

2.インドネシア:高効率システム(兼松株式会社)

採択年度:2014年

製紙工場における省エネ型段ボール古紙処理システムの導入。

インドネシア製紙業界シェア2位のFajar Paper社において、段ボール古紙をリサイクルしてボール紙を作る工程に日本製の高効率システムを導入するプロジェクトです。これにより、生産量当たり約10%の電力使用量を削減することができ、CO2排出削減が可能になります。
19,011 tCO2/年の温室効果ガス削減量が想定されており、クレジット発行中です。

<参考>2023年11月10日閲覧
・炭素市場エクスプレスウェブサイト  2017年4月10日記事
・JCMウェブサイト 事例紹介

3.ベトナム:アモルファス高効率変圧器(裕幸計装株式会社)

採択年度:2015年

南部・中部地域の配電網におけるアモルファス高効率変圧器の導入。

ベトナム南部の送配電網(南部配電公社管轄地域)に高効率の変圧器が導入されました。アモルファス高効率変圧器の導入によって、既存の送配電網が質の高いインフラに刷新されるというプロジェクトです。
3,885 tCO2/年の温室効果ガス削減量が想定されており、クレジット発行中です。

<参考>2023年11月10日閲覧
・炭素市場エクスプレスウェブサイト 2017年2月9日記事
・JCMウェブサイト 事例紹介

3.今後

2023年3月28日、経済産業省、環境省及び外務省は、JCMの更なる促進に向け、民間事業者向けの「民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス」を公表しました(※4)。
これまでJCMプロジェクトでは、日本政府により脱炭素設備導入や実現可能性調査、プロジェクト登録・クレジット申請に対する資金支援が行われてきました。しかし、民間事業者にとっては補助金等の関係規定や予算年度による実施スケジュールを踏まえる必要がある等、制約が存在したという実状があります。
今後は従来の政府支援に加え、民間資金を中心としたプロジェクト組成(民間JCM)を促進していくことが重要だという認識のもと、今回のガイダンスが作成されました。

民間JCMは民間事業者にとって、「資金支援事業のスケジュール・補助金利用に関する規定等に従う必要がなく、自由度が高い」「これまでのJCMクレジットの配分は資金支援を行う日本政府が相応量のクレジットを取得していたが、民間JCMでは民間企業のクレジット取得が期待できる」というメリットがあります。
今後は、JCMの活用場面がさらに増えると予想されます。

4.まとめ

いかがでしたか。この記事では、JCM(二国間クレジット制度)の概要、実施状況と今後について解説しました。気候変動を背景に、温室効果ガス排出削減・吸収量の価値が高まっています。JCMも民間事業者にとってより柔軟に取り組める制度になるよう刷新されていきます。事業の海外展開の際には、JCMについて検討してみてはいかがでしょうか。

<参考> 
導入
※1 環境省 2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要

1.二国間クレジット制度とは
環境省 JCM(二国間クレジット制度)について
※2 環境省 「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策 

2.実施状況
※3 JCM特設サイト JCM概要

3.今後
※4 経済産業省 2023年3月28日ニュースリリース
(全て2023年11月10日閲覧)

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