目次
- CDPサプライチェーンプログラムって何?
- 投資家スキームとの違い
- CDPサプライチェーン参加のメリット/デメリット
1.サプライチェーンメンバー/購買企業
2.サプライヤー - まとめ
1.CDPサプライチェーンプログラムって何?
気候変動対策が重要な課題だと認識される昨今、「CO2排出量の報告を求められる機会が増えた」という事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、これまでは自社の燃料・電力の消費に伴うCO2排出量(Scope1・2)のみ算定してきた、という事業者様も多いかと思います。しかし現在、そして今後は、サプライチェーン上の排出量(Scope3)の算定も必要になってきます。
ただ、Scope3の算定はScope1・2の算定と比べて、情報取得が難しく、算定が困難なケースが多いというのが現状です。
そんな中、英国の慈善団体が管理するNGO「CDP」が、サプライチェーン全体の排出量を算定し、その開示を各社に求める動き「CDPサプライチェーンプログラム」を加速させています。
この記事では、CDPサプライチェーンプログラムとは何か、解説します。
2.投資家スキームとの違い
CDPと聞くと、投資家に代わって世界の上位企業に対し環境情報の開示を求めて質問書を送付し、回答要請を行う「CDP キャピタルマーケッツ」(投資家スキーム)を連想する方が多いのではないでしょうか。CDPはこの投資家スキームに加え、「CDPサプライチェーン」、「CDPシティ」(自治体関連)を実施しています。
ここでは、事業者様が関わる「CDP キャピタルマーケッツ」と「CDPサプライチェーン」の違いをご紹介します。
大きな違いは、情報開示の要請元です。
CDPキャピタルマーケッツは、機関投資家等の「署名機関」が企業に情報開示を要請します。これに対し、CDPサプライチェーンは、サプライヤーを取引先にもつ「購買企業」が、自身のサプライヤーに情報開示を要請します。
(参考:CDPジャパン 2023年7月18日閲覧)
【CDPキャピタルマーケッツ と CDPサプライチェーン の比較】
名称 |
CDPキャピタルマーケッツ |
CDPサプライチェーン |
情報開示 |
署名機関 |
サプライチェーンメンバー |
情報開示 |
回答要請を受けた企業 |
回答要請を受けた企業 |
質問書の内容 |
CDP投資家質問書 |
CDP投資家質問書と同じ内容 |
参加方法 |
回答を要請されると、CDPからEメールで回答ダッシュボードとORSへのアクセスリンクが送られてくる。指示に従い回答。 |
回答を要請されると、CDPからEメールで回答ダッシュボードとORSへのアクセスリンクが送られてくる。指示に従い回答。 |
費用 |
・年1回発生 ・初回開示者は費用免除。 |
・年1回発生 ・初回開示者は費用免除。 ・キャピタルマーケットの署名機関から投資家の要求を受け取っていない企業で、要請元がサプライチェーンメンバー(顧客)のみである場合等、条件に合致すれば費用免除。 (参考:CDP 2023Q&A 2023年7月18日閲覧) |
※回答を要請されていない場合には、自主選択企業 (SSC) として ヘルプセンター経由で回答可能。
(参考:CDPジャパン 2016年資料、2022年5月 資料、2022年FAQs資料 2023年7月18日閲覧)
3.CDPサプライチェーン参加のメリット/デメリット
1.サプライチェーンメンバー/購買企業
<メリット>
- CDPを介してサプライヤーに環境情報の開示を要請することにより、サプライチェーンを通じて、環境リスクと事業機会を特定し、エネルギー効率を高め、温室効果ガスの排出を削減することができる。
- CDPサプライチェーンに加盟することで、調達行動をより持続可能で、より環境耐性の高いものにすることができるようになる。
- CDPの質問書はグローバル・スタンダードであり、集約データの開示を基本としていることから、他社との比較、開示、投資家へのアピールがスムーズに行われる。
2.サプライヤー
<メリット>
- 投資家対象でない企業にとって、世界の潮流になっている課題を知る機会となり、同規模の企業より先駆的な取り組みができ、又、自社の開示に役立てられる。
- 既にCDP投資家質問書、サプライチェーン質問書に回答しているサプライヤーにとっては、回答負担が大幅に軽減される。
<デメリット>
- 初めてCDP質問書に回答するサプライヤーにとっては、リスクや機会といった観点から気候変動をどのように考えるかという質問に戸惑い、回答が困難なケースがある。
(参考:CDP2016年資料 サプライチェーン排出量活用セミナー 2023年7月18日閲覧)
4.まとめ
いかがでしたか。気候変動が大きなリスクとなっている昨今、自社のみならず、サプライチェーン全体でそのリスクへの対策を講じることが重要な課題となっています。
CDPは、「計測されていないものは管理できない。」と述べています。まずは自社のScope1・2のCO2排出量を把握し、その上で排出量削減の対策を講じていくことが大切です。これは同時に、CDPの回答要請に備えることにも繋がります。
回答要請を受けた際には、ぜひ積極的に取り組んでいただき、御社のビジネスチャンスにつなげていただければと思います。