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GHG排出量の第三者検証で企業価値を向上ーCDPスコアアップの視点も含めて解説!
更新日:2025.04.14
目次
- はじめに
- 第三者検証とは?
- CDPとISO 14064-3による検証基準
- CDPの検証基準
- ISO 14064-3の定義
- 第三者検証の必要性とメリット
- 保証・透明性・信頼性の確保
- CDPスコアアップと企業価値向上
- まとめと今後の展望
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1.はじめに
近年、ESG投資の拡大とともに、温室効果ガス(GHG)排出量の正確な把握と削減、さらにその情報開示が企業経営において不可欠な要素となっています。
国内では、東京証券取引所のTCFD開示実質義務化や「CDPサプライチェーンプログラム」の導入により、大企業のみならず中小企業にも開示のプレッシャーが高まっています。
こうした背景から、第三者検証の重要性が再認識され、企業の信頼性向上に直結する取り組みとして注目されています。
(出典:環境省 「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2022年度版~」2023年3月 2023年8月1日閲覧)
関連記事:「【2023年】TCFD開示実質義務化 時系列で解説!」
「【CDP】サプライチェーンプログラムとは?比較しながら紹介!」
2.第三者検証とは?
第三者検証とは、企業が開示するGHG関連情報に対し、独立した第三者がデータの収集、管理、報告プロセスを客観的に評価する仕組みです。
この検証を通じて、企業内部だけでは把握しきれない視点からのフィードバックが得られ、信頼性や透明性が大幅に向上します。
実際、CDPをはじめとする多くの評価機関が、第三者検証の実施を推奨しています。
CDPとISO 14064-3による検証基準
1.CDPの検証基準
CDPのスコアリングでは、第三者検証を受けた企業がより高い評価を獲得します。
CDPが示す検証基準は以下の6点に集約されます:
- Relevance(関連性)
- Competency(能力)
- Independence(独立性)
- Terminology(用語)
- Methodology(方法論)
- Availability(入手可能性)
また、CDPはISO 14064-3やISAE 3000、さらには各地域の排出量取引制度などを検証基準として認定しており、これらに沿った検証が行われることで、スコアアップに直結する評価が実現します。
(参考:CDP [Verification、VERIFICATION FAQs]、CDPジャパン [CDPスコアリングイントロダクション 2023] 2023年8月2日閲覧)
2.ISO 14064-3の定義
ISO 14064-3は、「温室効果ガス-第3部」として、GHGに関する主張の検証プロセスを体系化しています。
この規格では、検証(verification)を以下のように定義しています:
- 検証の定義:
合意された基準に基づき、独立かつ文書化された手続きでGHG主張を評価するプロセス。
※第一者による検証の場合、独立性が担保される場合もあるとされています。 - 検証者の定義:
必要な力量と独立性を持ち、検証プロセスと報告に対して責任を負う専門家または機関。
これにより、ISO 14064-3は、客観的かつ透明性の高い検証プロセスを実現するための信頼性の指標となっています。
(定義出典:ISO14064-3 3.原則)
3.第三者検証の必要性とメリット
1.保証・透明性・信頼性の確保
- 企業内プロセスの改善:
第三者検証を受けることで、GHG排出量の算出方法や報告プロセスの妥当性が確認され、内部改善につながります。
- ステークホルダーの安心感:
独立した検証により、外部からの信頼性や透明性が担保され、投資家や取引先に対する説得力が向上します。
2.CDPスコアアップと企業価値向上
- スコア評価の向上:
CDPでは、スコープ1および2は100%、スコープ3は最低1カテゴリーで70%以上の第三者検証が実施されている企業が、Aランクに選定されるなど、直接的なスコアアップが期待されます。
- 企業価値の向上:
第三者検証による透明性と信頼性の確保は、企業のブランド価値や市場での競争力向上にも寄与します。
(参考:CDPジャパン [CDPスコアリングイントロダクション 2023] 2023年8月2日閲覧)
4.まとめと今後の展望
GHG排出量の正確な把握と効果的な削減は、今後の企業戦略において重要なテーマとなります。
第三者検証は、単なる形式的なプロセスではなく、企業内部の改善と外部からの信頼獲得を同時に実現するための鍵です。
今後、さらに厳しい環境規制や投資家の要求が高まる中で、適切な第三者検証の実施は、企業の持続的成長に不可欠な要素となるでしょう。
関連記事:「【GHG排出量】第三者検証の進め方をISOに沿って解説!」
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