異常気象の増加と地球温暖化の進行は、私たちの日常に深刻な影響を与えています。これらの環境問題の一因として現代の農業手法を指摘しています。「農業と環境問題」の記事でもご紹介した通り、既存の農業から新たな農業のかたちを模索していく必要があります。
そこで今回は、持続可能な農業という文脈での「有機栽培」について解説していきます。
目次
- 農業の環境への影響
- 有機栽培の地球温暖化への貢献
- 異常気象に強い有機農業
- まとめ
農業の環境への影響
近代農業の方法は、大量の化学肥料や農薬の使用、単一作物の大規模栽培などにより、土壌と大気に悪影響を及ぼしています。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、食糧生産が全体の温室効果ガス排出の約29%を占めています。
科学技術の発達により、農業は劇的に進化し、その生産性と効率性によって世界の食糧供給に大きく貢献してきました。しかし、その裏では、化学肥料や農薬の過剰な使用、大規模の単作農業の広がりなどが環境に多大な負荷をかけています。これらの農業は、需要を満たすという観点のみでは有効ではありますが、長期的な環境への悪影響を踏まえると最適なかたちとは言えません。
化学肥料と農薬の使用
大量の化学肥料の使用は、一見すると作物の成長を促進し、収穫量を増やすことができる有効な手段のように思えます。 しかし、これらの化学物質の過剰の投与は、土壌の自然な肥沃性を破壊し、土壌生物の多様性とその生態系機能を損ないます。 農薬は一部の害虫や雑草を死滅させることができる一方で、植物の成長に必要な昆虫や微生物も同時に殺し、農業生態系のバランスを崩すことがあります。
大規模な単作農業の広がり
単一作物の大規模栽培は、特定の作物に特化した大規模な生産体制を可能にしますが、これにより生物多様性が著しく低下します。単一の作物に依存することで、病気や害虫の大発生リスクが高まり、それを抑えるためにさらに多くの農薬が必要となり、負のスパイラルが生じます。 特にアメリカを中心とした広い国土を基盤として農業がおこなわれている国ではこの問題が深刻化しています。
有機栽培の地球温暖化への貢献
有機栽培は、土壌中に炭素を貯留し、大気中の温室効果ガスの削減に貢献します。合成肥料の代わりに自然由来の肥料を使用し、土壌の健康を保ちながら環境負荷を減らすことが可能です。
土壌に含まれる有機物は、農地の健康を維持し、作物に持続的に栄養を供給するために非常に重要な役割を担っています。これにより、農業の生産性と安定性が向上します。堆肥や緑肥などの有機物が農地に施されると、その多くは微生物によって分解されて大気中に放出されますが、分解されにくい一部が土壌有機炭素として土中に長期間蓄積されます。これは、土壌の物理的、化学的、生物的特性を改善し、健康な農業環境を維持することができます
(出所:農林水産省)
異常気象に強い有機農業
気候変動によって、多くの作物が被害をうけています。一つの作物を育てている農家の場合は脆弱性が高く、リスクがあります。
一方で有機栽培によって栄養豊かで水分を保持した土壌は、干ばつや水害などの異常気象に対しても強い耐性をもっています。
また、土壌微生物やそのほかの昆虫や動物の多様性が高いため、変化する環境に対応できる可能性が高くなります。
今後、気候変動によってさらに変化していく環境に対応していくためには、多様性の観点を持ち、作物を育てる必要があります。
まとめ
国連のパリ協定では、気温上昇を1.5℃未満に抑える目標が掲げられています。有機栽培は、地球温暖化の進行を遅らせるだけでなく、生物多様性の保護、土壌の健康改善、持続可能な食糧生産システムの構築に寄与します。
私たちの食生活の選択は、地球の未来に直接的な影響を及ぼします。有機農業の実践と普及は、環境問題に対する積極的なアプローチであり、次世代に健全な地球を継承するために不可欠です。
今、私たちは地球と共存する方法を模索し、行動に移す必要があります。有機栽培はその一つの答えであり、持続可能な未来への一歩となるでしょう。
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