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東京都 総量削減義務と排出量取引制度で期待される効果
更新日:2024.12.01
東京都が実施している「総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)」(以下、本制度)。
この制度は、大規模事業所(前年度の燃料、熱、電気の使用量が、原油換算で年間1,500㎘以上の事業所)にCO2排出量の削減義務を課すものであり、オフィスビル等をも対象とする世界初の都市型キャップ&トレード制度です。2010年4月にスタートしました。
対象事業所の総排出量は都内の産業・業務部門の排出量の約4割に及びます。対象事業所は、自ら排出削減対策を実施するか、排出量取引を行うことにより、決められた量を削減しなければなりません。また、対象事業所には、排出量の算定、検証及び報告が義務付けられています。
前回の記事では、本制度の概要を解説しました。
図1【制度概要】
出所:東京都環境局 冊子「環境先進都市・東京に向けて~CREATING A SUSTAINABLE CITY~(2021年11月)」p9
今回の記事では、本制度のメリット・デメリットを解説します。
目次
- 期待される効果
- 排出量削減
- 排出量削減対策のコストを低減
- 対象事業所の排出量削減手段が増える
- まとめ
1.効果
それでは、本制度で期待される効果を見ていきましょう。
1.排出量削減
本制度で期待される効果は、まずは東京都の対象事業所全体のCO2排出量を削減できることです。本制度導入後、対象事業所の総CO2排出量は図2のとおり減少しています。
この排出量減少には、2011年東日本大震災後の節電行為や2019年度以降の感染症対策をはじめとする様々な要因も影響しており、制度単独の効果は明らかではないとする見方もあります。
しかし、2021年度の対象事業所の排出量は合計 1,111 万トン(2月時点)で、一部対象事業所における営業時間の回復等の影響がある中、省エネ対策の進展及び低炭素電力・熱の利用により、引き続き、基準排出量から33%削減となりました。
都は、第三計画期間(2020 年度~2024 年度)においても、全ての事業所が義務履行できるよう、引き続き対象事業所における CO2削減を促進していくとしています。
図2【実績】
図3【第三計画期間の義務履行の見通し(参考値)】
図2・3出所:東京都環境局 2023年3月2日報道発表資料「【東京都 キャップ&トレード制度】第三計画期間2年度目においても対象事業所の排出量の大幅削減が継続」
2.排出量削減対策のコストを低減
排出量取引により、社会全体の排出量削減コストをより少なくすることが可能です。CO2排出に価格がつくことにより、より安価な対策が選ばれることになります。また、削減に積極的な事業者が経済的にメリットを享受できます。
尚、現時点では、自らの削減対策等により削減義務を達成している事業所が多いため(図3参照)、有償・無償を合わせても排出量取引を利用している事業所は少数です。しかし、2025年度からの第四期は削減義務率が引き上げられる見通しとなっており、達成のハードルが高くなった場合は、排出量取引を利用する事業所が増加すると予想されます。
3.対象事業所の排出量削減手段が2種
対象事業所は、「自社の努力で削減する」か「排出枠を他から購入するか」を選ぶことができます。排出量規制のみの制度と比較すると、本制度は柔軟性があると言えます。
3.まとめ
いかがでしたか。この記事では、総量削減義務と排出量取引制度の効果について解説しました。
今後も本制度は継続されます。東京都は2050年までにCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言しており、その達成に向けて、本制度の強化も検討されています。
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