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合理的保証・限定的保証の違いとは?(排出量第三者検証)
更新日:2025.04.14

目次
2-1 合理的保証(Reasonable Assurance)
関連コンテンツ:「第三者検証/保証」
第三者検証を進める際、まずは関係者間での合意形成が重要です。
その合意形成の中で決定すべき項目の一つが「保証水準」であり、これは検証内容の信頼性の程度を示します。
過去の記事では、GHG排出量の第三者検証に関する基礎知識や、検証の進め方について詳しく解説してきました。
「【GHG排出量】第三者検証は必要?CDPスコアアップの視点も含めて解説!」
「【GHG排出量】第三者検証の進め方をISOに沿って解説!」

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月4日閲覧)
2-1 合理的保証(Reasonable Assurance)
● 特徴:
○ 高い保証水準を採用し、主張の適正性を積極的に保証
○ 例:声明書に「~が適正であると認める」と記載する
● 背景:
○ 排出量算定における技術的限界やコスト制約を考慮し、絶対保証ではなく十分な水準での保証を提供
● 特徴:
○ 低い保証水準で、誤りが見受けられなかったことを消極的に保証
○ 例:声明書に「~に誤りは認められなかった」と記載する
● 背景:
○ 企業がサステナビリティ情報を公開する場合など、全数精査が困難な場合に採用されるケースが多い

(出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)」平成23年3月資料 2023年8月29日閲覧)
ISO基準(ISO14064/14065やJIS Q 14064-3)では、検証開始時に利用者のニーズを踏まえて保証水準を確定することが求められています。
絶対的な保証は不可能なため、検証者は収集した証拠をもとに、合理的または限定的な保証を選択します。
このプロセスにより、企業やプロジェクトの目的に沿った適切な検証が実施されるのです。
保証の水準が高くなると、
● 工数の増加
● 現地調査やサンプリングの実施数の増加
● 金銭的・労力的な負担の増大
が伴います。
そのため、経済的な取引や法的な要請が絡む場合には「合理的保証」が、情報公開などの目的の場合は「限定的保証」が選ばれる傾向にあります。
● 事例:
○ 排出量を基に金銭取引が発生する制度(例:SHIFT事業、CDM、JVETS、J-VER制度)
● ポイント:
○ 高い信頼性が求められるため、合理的保証が必須となる(出典:環境省ガイドラインなど)
● 事例:
○ 自社サイトでのサステナビリティ情報開示の一環として実施される保証
● ポイント:
○ 実施数は限られているものの、コストや内部統制の整備状況から限定的保証が採用されることが多い

● CDP回答時の対応:
○ スコープ3排出量に関して、検証/保証の種別を問われるケース
○ 選択肢として、限定的保証、合理的保証などが提示され、企業は適切な保証水準を選択する

(選択肢:該当なし、限定的保証、中位の保証、合理的保証、高位の保証、第三者の検証/保証実施中)
(参考:CDP Climate Change 2023 Reporting Guidance)
● GXリーグの動向:
○ 将来的には全企業に合理的保証を求める方向性が示されているが、現段階では各企業の体制や検証機関のキャパシティにより段階的な移行が検討されている
● 課題:
○ 排出量取引での金銭的リスクと検証負担のバランスを如何に取るかが鍵となる

(出典:GXリーグ 事務局「GX-ETSにおける第1フェーズのルール」(2023年2⽉) 2023年8月29日閲覧)
今回の記事では、第三者検証における保証水準の違い(合理的保証と限定的保証)について、基本的な概念と具体例を交えて解説しました。
● 検証の目的や情報公開の意図により、どちらの保証水準が適しているかは変動します。
● 経済的な取引が絡む場合には、より高い信頼性を求める「合理的保証」が必要となる一方、内部統制やコスト面を考慮して「限定的保証」が選ばれるケースも多いです。
検証の際は、まず目的を明確にし、検証機関と十分に協議して最適な保証水準を決定することが重要です。
関連コンテンツ:「第三者検証/保証」
【お問い合わせ先】
環境エネルギー事業協会 支援部
tel:06-7878-5274
mail:info@ene.or.jp
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